公開日:2026/07/12

更新日:2026/07/12

 先週の金曜に発売された村上春樹の3年ぶりの最新刊を今日(7月12日)一気読みしました。研修もおわり、午後集中して物語に入ることができました。感想を一言でいうのはむりですが、村上春樹らしさ満載でした。テンポよくサクサク読めました。

 どこにでもいそうなごくごく普通の女性、夏帆とその家族の物語です。この家族も特に特別なところもなく、ごくごく普通の家族です。特別な環境とか、何か殺人事件が起こるわけでもない。何気ない日常が舞台です。しかし、その日常に別の世界、裏側の世界が少しずつ重なりだします。それが(それらが?)、現実なのか、非現実なのか、夢の中なのか、夏帆が描いている絵本の物語なのか、世界の裏側なのか、(解釈やとらえ方は読者次第だとおもいますが、)わけがわからなくなります。その現実と、それ以外の世界の行ったり来たりが、自然にきりかわり、テンポよくストーリーが進んでいます。そのテンポの心地よさが最高です。

 前回の作品「街とその不確かな壁 」より、個人的には今回の作品のほうが好きです。前回は、ストーリーは少し忘れましたが、現実から少し離れすぎた印象をもったような気がします。しかし、今回は誰もが普段過ごしてる、目にしている社会が舞台であり、共感するところが多かった。人間の表と裏、だれもが持っている心の闇みたいなものをうまく表現しているのかどうかよくわかりませんが、私は人間の両面性が描かれているような気がします。 世の中的に正しいものも、角度を変えてみると正しくなかったり、間違っているものも、見方をかえると間違っていないこともある。このようなことが登場人物、登場動物との会話の中にちりばめてある。世の中のどんな人も、裕福とか裕福じゃないとか関係なく、考えていること、悩んでいることは、共通していることがわかり、安心感や勇気がもらえます。

 夏帆は部屋の隅に置かれた小さな木製のスツールを持ってきて、母親の枕元におき、そこに腰をおろして静かに眠っている母親の顔を、近くから時間をかけてじっくり観察した。そしてほどなく、この人はどうやら私の母親らしいという結論に達した。ここにいるのは、本物の私の母親であり、「とぎや」で顔を合わせて話をしたあの相手ではない。見かけはそっくりおなじだが、両者の間には何かしら異質なものがある。たたずまいのようなものが明らかに違っている。ひとつの絵画と、とても精巧に作られた模写ーーそんな感じだ。他の人はその違いはたぶん認知できないだろうが、娘である私にはわかる。

  このような微妙な表現が数多く見られます。微妙な違いが的確なわかりやすい言葉で描かれています。

 また、この作品は私的には私が村上作品のなかで一番好きな「1Q84 」と似ているような。凶器を隠し持つところとか。夏帆が「1Q84 」の青豆に似ているような気がしないでもないです。次回作は発売されるのだろうかもしかしたらさいごかもしれません。